ねえ、本当は誰なの?-朗読劇ours感想‐
橋本真一さんがご出演された朗読劇「ours」を拝見したので感想を書きます。
以下、本編のネタバレが含まれます。
あらすじとか事前情報を見ていて、多重人格の話なんだろうなあというのはなんとなく感じていました。
というのも、Kiramuneリーディングライブでやった「Be-Leave」に雰囲気が似ているなあと思ったからなんですよね。(Be-Leaveはビリー・ミリガンをモデルにしたんだろうなあ…という感じの多重人格サスペンスです。サスペンス…?ミステリ?)
ちなみにBe-Leaveは映像化されていないのでこの感覚は見た人にしか伝わらないと思う……
他の作品で例えるなという話だが…まあそういう事前知識があったので、多分多重人格もので、それぞれ出てくる人たちは違う人のように思えるけれど、器となる身体はひとりなんだろうな、と思いながら見ていた
「ねえ、本当は誰なの?」が一番ヒントになったかなあという印象
ひとりで全部の役を演じる一人朗読劇だからこそ、というのもあり、脚本にもマッチしてたんだなあ… 実際、諸橋真人くんはひとりの男性なわけで、老女や若い女の子、猫と演じ分けをしていてもそれを演じる器である橋本真一さんはひとりだけ…という、第三者視点では同じ現象が起きているのが上手いなあと思いました。
ちなみにBe-Leaveはそれぞれの人格を別々の役者が演じていたので、より真相に近づくのは遠かったんだが…。
お芝居ももちろん良かったけど、私はこういうとき脚本が面白いかどうかで評価が変わるタイプなので(リーライも面白ければそれで良い派)oursは好きなタイプのお話で良かったなあと思いました。
合計40分くらいの短いお話ですが、前編・後編が約20分ずつ、前編は出題編、後編は回答編という感じかな。
前編終わりのところで台本をバサッと投げ捨てるのがおお…となってかっこよかった。
二年前の事故で真人くんはバイクで、8歳の少年の悠と、悠が追いかけた猫を轢いてしまって、反対車線の軽自動車に乗っていた家族も殺してしまった。バイクの後ろに乗っていた琴波は意識不明の重体…
多重人格が発生するのは自分の人格を守るために別人格を生み出すからだけど、oursの場合は自分が傷つけた人たちの人格を取り込んで「自分自身の中で生かしている」のが面白いなあと思いました。
老女のキヨさんは軽自動車に乗っていた家族を失った方だったから、現実世界にもキヨさんは生きているはずで、その人格をトレースしているということなのかなあ…。
琴波も生死はわからないけど、多分生きてはいるんだろうな。
通常の発生の仕方で作られた人格はシンくんだけなんだろうな。自分を守るためだけに、他のものを憎み続ける、憎悪を引き受けてくれる存在なのでしょう…。
後編の途中で真人くんが悠くんに「義足だけで生きてるお前とは~」みたいな台詞を言うシーンがあったけど、それすらも自分自身に言っている台詞というか、自分に返ってくる台詞だったんだろうな。おもしれ~…。
真人の中の人格に悠はいなかったけど、実際悠も死んでいて、真人の脳内で悠と会話している、という感じなのかな 一生自分を責め続ける自分の中の人格…って感じだったのかな 最終的に悠は消えてしまったようだったのでいなくなってはいたみたいだけども……
あと名前も、モロは諸橋のモロ、シンは真人のシン、琴波も諸橋真人のアナグラムなのかなと思ったけど…猫の名前とか琴波は人格を作り出したわけではないもんな…
キヨさんも完全に他人だし…。
一発撮りで20分・20分撮影したという話を聞いて壮絶…と思ったし、あまり稽古もせずに出て来たものを~というお話ですげえ~~……と思いました。
声優さんの朗読劇は何度も見たことがあるけど、橋本さんは声音でというより身体全体を使って朗読…お芝居をしている印象だった
キヨさんのときの歩き方とか、シンくんのときの癖(口元に手をあてる)とか、同じ器ではあるけど違う人格に見せようとしているお芝居がすごいなあと
猫のモロのときとかもそんな体勢で朗読やる!!???みたいな驚きがあった
もちろん声音とかトーン、話すときの間とか抑揚も変わっていて、今誰が話しているか(どの人格なのか)、が分かりやすくなっていたのも良かった 違う人になったら振り返るとか、視覚的にも理解しやすいのも良いですね…
私はガラスの仮面が好きなのでガラスの仮面の話をしますが、北島マヤが高校でひとり芝居をするエピソードを思い出しましたね…
「通り雨」のときとか、マヤには無い「役としての癖」を芝居のときにしていたのがあって…そういうやつを彷彿とさせました
振り返る動作が多かったのもあって、衣装の揺れが本当に美しかった……。
振り返ったときの揺らぎを計算して作ってる衣装なんだろうなあとか。
あと裸足だったのも、BGMが無いからひたひた歩く足音が良く聞こえてそれも良かった。片脚だけ赤のスパッツ?タイツ?を履いていたのも義足を表現していたんだと思うんですが、赤で血を表現しているのかもなあと思えたのもよかった ちょっとゾクッとしますね
以前橋本さんが写真集のお渡し会のときに写真集はカメラマンさんとかメイクさんの作品でもあるというお話をされていたんですが、今回のoursも衣装やカメラ、メイクも含めて橋本真一という器を使って表現するひとつの作品だったんだろうなあという風に感じました
橋本さんの咆哮というか、最後の嘆きや苦痛のお芝居もよかったな…
起こしてしまったことはもう変えられなくて、真人くんはこれからも後悔と懺悔を続けながら、自分の中の人格と生き続けていくしか無いんだろうな…
最後の最後、真人くんの精神が限界を迎えたことでシンくんが出てきて、シンくんとしてフレームアウトしていくのも美しいなあと思いました
いや~普通にひとつの物語として大変面白いお話を見せていただいた……。
配信期間があるわけではなく、気になったらいつでも見れるもののようなので色んな人に見ていただきたいなあと思いました。
そういう感想は畳む前に書いたほうがいいんだが……
私は数年前に同い年の従姉妹を交通事故で亡くしているので、こういう話を見ると従姉妹のお葬式のことを思い出すなあと思いました。
交通事故は……悲しいから……みんな安全運転で行こうぜ……
以上です